神楽坂にて

以前、会社が東五軒町にあったころ、神楽坂から脇道に入ったところに、お気に入りのラーメン屋があって、月に2~3回は食べに顔を出していました。
必ず、注文するのは「味噌ラーメン」。ここの味噌ラーメンは、まろやかなスープが決め手で、これに、野菜とげんこつをトッピングするのが、私の定番です。
当時、昼時は行列ができるほどの人気店で、カウンターがメインの店内では、店主以下、数名のスタッフが、忙しそうに働いていました。
空席に通されると会話はいつも同じ…。
店主「ご注文は?」
私「味噌 野菜 げんこつ」
店主「あいよ、味噌野菜げんこつ!」
あとは、出されたラーメンを平らげて「ごちそうさま!」「ありがとうございます!」
たった、これだけの会話…。まあ、あれだけ慌ただしい店内では、ごく普通のやり取り。
その後、会社が移転して、このラーメン屋もすっかり行かなくなって、10年近くが過ぎたある日。
たまたま昼時に近くを通りかかったら、急に懐かしくなって、のれんをくぐることに。
店内はあの頃のままで、変わったといえば、店主の背中が少し曲がったことぐらい…。
店主「ご注文は?」
私「味噌 野菜 げんこつ」
店主「ヒゲ…生えてる…」
私「え?」
店主「昔、ヒゲ生えてなかったじゃない」
私「え?ああ、そうですね…」
店主「偉くなっちゃたんだ?」
私「いやあ、偉そうに見えるようにしているだけです。」
店主「そうなの?ハハハ(笑)」
私のことを、覚えていてくれたんだ…!。
いつもの通り、ラーメンを平らげてお勘定。
店主「また、近くに来たら寄ってね」
私「はい、是非」
外に出たら、小春日和のいい昼下がりでした。

ゆかしさにスープ飲み干す小じわ顔

 

2019年04月20日