大林宣彦監督

遠い昔の話です。
私は映画の世界が好きで、自主映画の制作をしていました。
もちろん、今と違ってビデオも無く、
8mmカメラという家庭用の機材を使って作品を制作する時代です。
この頃から私が大好きだった映画監督が、大林宣彦氏です。
大林監督もまた8mm映画の世界からからプロになられた方で、
当時、多くの自主映画作家たちの憧れの的でもありました。
ある日の事です。大林監督作品がが明治学院大学で上映され、
ゲストに監督ご自身がいらっしゃると聞いて、私は居てもたってもいられず、会いに行きました。
確か「転校生」という作品の公開の頃だったと記憶しています。
上映会とトークコーナーが終わって、帰り支度をされている大林監督に、私は思い切って声をかけました。
「大林監督、私は自主映画を制作しているものです。いつか、プロになりたいと思っております。どうしたらなれるでしょうか?」
まだ大学生だった私の不躾な質問に、監督はあの優しい笑顔で答えてくれました。
「うん、そうね…。私が、アマチュアだった頃ね、もう日本には、たくさんの優秀な監督がいて、とても、私なんかプロにはなれないと思っていたんですね。でもね…私は今こうしてプロになっています。なぜだと思います?
それはね、やめなかったからです。人生には、順番というものがあってね、それは誰にでも回って来ます。
だから、君も映画制作をやめないで続けていれば、いつか順番が回って来ると思いますよ。」
この時、監督から頂いた「言葉」と「直筆のサイン」は、私の生涯の宝物です。
大学を卒業して、社会人になった私は、お金と時間がかかる映像作品から、だんだんと疎遠になって行きました。
でも「続けていれば、いつか順番が回って来る」という言葉は、今でも、私の心の大切な部分にしっかりと根付いています。
仕事の事、家庭の事、道場の事…。様々な出来事を振り返るとき、いつも「続けていれば順番が来る」=「継続は力なり」が行動の根底にあったように思います。
そして、私はまだ、一度も「映画制作をやめた!」と言っていないのも事実です…。

2020年4月10日 19時23分
大林宣彦監督がお亡くなりになりました。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。

桜川居合剣術会 
代表 石島康久

2020年04月12日